爪や髪を染めたり、肌に入れ墨を施したりといったことは、太古の昔から行われてきました。女性が持つ、美しくなりたいとの欲求は今も昔も変わらないようです。

と同時に、化粧には社会的地位を示す意味もありました。紀元前1600年の中国では、化粧に使用できる色が階級別に決まっており、庶民が王を象徴する色を使用した場合は死刑に処されたそうです。

美容の歴史をひも解くことで、現代の化粧を再評価できるのではないでしょうか。古代から21世紀までの化粧の歴史を、4回に分けて紹介します。第1回目の今回は、古代人のオシャレを見ていきましょう。

最初に化粧品を使用したのは、古代エジプト人だった

古代エジプト人は、紀元前3000年には、既に化粧をする習慣がありました。鉱物、昆虫、果物を使って目元、唇、肌に使用する化粧品を作っていました。毛髪や爪はヘンナ染料で染めていたようです。

ネフェルティ女王(紀元前1400年)は、ヘンナ染料で指先を赤く染めていました。クレオパトラ女王(紀元前50年)にいたっては、死海の近くに専用の化粧品工場をもっていました。

また、古代エジプト人は鉱物の粉末や硫黄、獣脂を使用してコール・メーキャップを生み出したことでも知られています。コール・メーキャップは、目の炎症を緩和したり、照り付ける太陽から目を守る働きをします。

社会的地位を象徴した中国の化粧


紀元前1600年の殷王朝時代に、貴族が爪を深紅や漆黒に染めていました。その原料は、アラビアゴムやゼラチン、蜜蝋、卵白などの混合物です。中国では、爪を染めることが社会的地位に結びついていた時代があります。紀元前1100年の周王朝時代では、金と銀が王を象徴する色でした。

ヘアデザインが流行した古代ギリシャ

紀元前500年のはじまったギリシャの黄金時代には、ヘアデザインが発達しています。古代ギリシャ人は、身だしなみを整えるという目的以外にも、宗教的儀式や医療目的で香水や化粧品を使用していました。

ギリシャ人女性は、顔には白鉛の調合剤、目にはコール、頬と唇にはバーミリオンという朱色の顔料を塗っていました。原料は、辰砂を粉末状にしたもの。辰砂は硫化水銀からなる鉱物です。

贅沢な化粧品を使用していた古代ローマ人

ローマ人女性も、香水や化粧品を贅沢に使用していましたが、原料は牛乳やパン、良質のワインです。トウモロコシと小麦粉と牛乳で作ったものや、小麦粉と新鮮なバターで作ったもの等もありました。

顔用化粧品として使用されていたのは、白墨と白鉛の混合物です。ローマの女性たちは、社会的階級を示すために髪を染めており、高貴な女性は赤、中流階級の女性はブロンド、貧しい女性は黒と決まっていました。